セゾンカード「節操なき膨張」の行方

執筆者:鷲尾香一2006年10月号

百貨店のハウスカードにすぎなかったのに、短期間で急拡販。ステイタスはなくとも、数さえ増えれば……。「とにかく提携のスピードが速い。それに、あれだけ新規会員を獲得しながら、カードを眠らせていない。業界の台風の目はあそこだよ」 クレジットカード業界の住人たちが、クレディセゾンの“猛進”に目を見張っている。いや、「現金以外の支払い方法」をめぐる商戦に参入しているすべての業者が、と言った方がいいかもしれない。その理由を知るためには、まず、商戦の見取図を頭に入れる必要がある。 JR東日本が推進する「スイカ」、複数の企業が協力する「エディ」、携帯電話キャリア各社が注力する「おサイフケータイ」、そしてクレジットカード――。現金以外でお金を払う道具は乱立しているようにみえるが、二つに大別できる。いわゆる電子マネーと、クレジットカードだ。 電子マネーは、現金や銀行預金の残高を何らかの「媒体」に記録(チャージ)したもの。「媒体」が携帯電話や磁気プリペイドカード(スイカやエディなど)に形を変えても、「前払い式」という本質は変わらない。利用できるのは、あらかじめ「媒体」にチャージしておいた額までだ。 一方、クレジットカードにも、銀行系を中心に、百貨店などの流通系、割賦販売を中心とした信販系、電機や自動車などのメーカー系というように様々な種類があるが、これらはすべて「後払い式」としてひと括りにできる。つまり、カードを使う時点で支払い口座にお金がなくとも、カード会社が信用を供与することで買い物ができ、また、キャッシングやローンも利用できる。

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