イギリス大規模テロ「未然摘発劇」の全貌

執筆者:マイケル・ビンヨン2006年10月号

イスラム過激派が謀ったテロは、今回は未然に防がれた。だが、今もどこかで次の計画が進んでいるに違いない。[ロンドン発]八月十日未明、劇的な強制捜査の結果、イギリスでイスラム系の若者二十四名が逮捕された。もし彼らの計画が成功していれば、ロンドン警視庁幹部が明らかにしたように、「想像を絶する規模の大量殺戮」が起こっていただろう。彼らは九・一一米同時多発テロ事件以来、最大のテロ作戦を目論んでいた。それは、アメリカに向けて飛行中の旅客機、少なくとも九機を爆破し、アメリカの大都市に墜落させ、三千人を超える乗客・乗員を殺戮するというものだった。 この大規模なテロ攻撃は、今回の摘発で頓挫し、一方、イギリスの情報機関は、喉から手が出るほど欲しかった大成功を得た。だが、これは普段から混雑しているロンドン各地の空港に大混乱を招き、多くの人々が飛行機に乗るたびに再び恐怖体験を強いられることになった。西側世界全体にも、不吉な暗雲が垂れ込めた。イスラム過激派によるテロの脅威は、依然として消えていない。この背筋の凍るような現実をいやというほど思い知らされたのだ。 事実、一連の容疑者が逮捕・尋問され、一部を除いては正式な起訴に持ち込まれてから数日もたたないうちに、このテロ計画の対象は、イギリスに限ったものではないという事実が明らかになってきた。テロ組織のネットワークは、アメリカ、西ヨーロッパのみならず、世界中に広がっていた。とりわけパキスタンは、今回の大規模テロ計画を阻止するうえで決定的な役割を演じたが、同時に、この計画の筋書きの大部分が練られたのも、容疑者の親たちの出身地も、テロの温床といわれるこの地だったのだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。