9月19日、ニューヨーク上場を果たし、記念の鐘を鳴らすアリババの馬会長 (C)EPA=時事
9月19日、ニューヨーク上場を果たし、記念の鐘を鳴らすアリババの馬会長 (C)EPA=時事

 習近平総書記の時代に入り、「中国の夢」や「中華の復興」が掲げられるようになると、中国の外交姿勢には、次第に覇権主義的な色彩がにじみ始めた。その結果、中国の政権構造を決めるものは、国内要因がすべてであるという考え方が中国の内部で強まった。振り返れば、中国が外国の勢力から圧迫されてきたのは、近代史をめぐる19世紀の中葉からのおよそ100年間であって、米国や旧ソ連の軍事力におののいていた時期も、1970年代に入っての米中関係の好転を背景に終了した。中国政府が今日に至るまでキッシンジャー・アソシエイツに少なからざる実質上の顧問料を払い続けているのは、この時点における中国の対外的立場の飛躍的有利化の実現に力を貸したキッシンジャーの役割を、中国側が歴史的なものとみなしているからだ。

 これに対して日本はどうなのか。中国共産党が終始一貫誇りうるのは、対日戦争勝利を掲げて国共合作を実現し、中国にとっての果実を確かなものにしたことである。この抗日戦線の構築という歴史上の偉業は、中国共産党への国民の支持が揺らぐたびに、原点回帰の対象となった。こうした枠組みが今後も維持できるならば、大国中国の政権構造を決めるものはすべて国内要因になるはずである。中華人民共和国には、Middle Kingdomという英語の通称が割り当てられてきた。しかし今後を展望したとき、Middle Kingdomが対外的な脆弱性をもつかもしれないという構図が、意外なところで示された。それがeコマースの巨人アリババの米国での株式上場をきっかけとした、日本流の表現を使えば「構造汚職」の発覚である。

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