欧州ワイン“減反政策”で泣く国笑う国

執筆者:シルヴィオ・ピエールサンティ2006年10月号

「売れないワイン」を減らして競争力を取り戻したいEU農業委員会。減反の方針には反対の大合唱が起こっているが……。[ローマ発]ワイン商人に何の金の必要があろう。幸福の精髄ともいうべき世界一価値あるもの、ワインを所有しているというのに――十一世紀ペルシャの哲学者、数学者にして詩人のオマル・ハイヤームは言った。 それから千年後、ハイヤームの時代ほどワインは貴重でなくなってしまった。製造量は増えるのに消費は減り、EU(欧州連合)の農業収入の一割を担うワイン産業は「売れないワインの海」に沈没しかねない有様なのだ。今なら、ヨーロッパのワイン業者はこう答えるであろう。「金は必要だ。生き延びるために」。 EU農業委員会のマリアン・フィッシャー=ボエルが六月二十二日、ワイン産業の抜本改革案を公表した時、まさにこれがワイン業者の最初の反応だった。改革案の主眼は、二流・三流のワインに対する補助金を減らし、優れたワインへの助成金を増やすことだからだ。 現在EUがワイン製造業者に出している補助金は年間十二億から十三億ユーロ(約千七百八十億から千九百三十億円)で、このうち約半分が売れ残りワインを自動車用・工業用エタノールに蒸留するために費やされている。ワイン一本に対し三ユーロかかる計算だ。フランスとイタリアは今年、大量の売れ残りワインの蒸留のためにそれぞれ一億三千百万ユーロ(約百九十四億円)を受け取り、スペインとギリシャへの支給額は、それぞれ二千二百二十万ユーロ(約三十三億円)だ。

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