家電量販店再編でメーカーも戦略見直しへ

執筆者:五味康平2006年10月号

 中国で家電量販店の再編が急進展した。業界トップの北京国美電器が業界三位の永楽電器を買収、売上高六百五十億元(約九千五百億円=二〇〇五年実績)、店舗数約六百三十という巨大量販店チェーンが誕生した。 これは、日本の家電量販トップで〇五年度の売上高が一兆二千八百億円のヤマダ電機に次ぐ、アジアで第二位の規模。国美に続く第二位の蘇寧電器も売上高は三百九十七億元(約五千八百億円)と、日本で業界三位のヨドバシカメラにほぼ肩を並べる。 急成長する中国家電販売市場に外資も関心を強めており、米家電チェーンのベストバイは業界四位で売り上げ百四十六億元(約二千百億円)の江蘇五星電器をすでに傘下に収めている。規模拡大を果たした国美や外資の資金的後ろ盾を得た江蘇五星などは、これから成長が期待される内陸地域への出店を加速するとともに、北京、上海などで日本のヨドバシカメラ秋葉原店のような巨大な売り場面積をもつ旗艦店舗の建設に動くとみられている。さらに、再編から外れた形の同五位の山東三聯集団、六位の北京大中家電などがどう動くかも注目だ。 一方、こうした業界再編を恐々としてみているのは家電メーカーだ。国美などは規模拡大で、仕入れ量に見合った卸価格の一段の引き下げや支払い条件の緩和を要求してくるのが確実だからだ。ただでさえ過当競争で収益力のない中国の家電メーカーの中には、力を強めた家電量販店の攻勢で経営が破綻する企業が出てくる恐れもある。流通分野の再編がメーカーの再編を促すという、先進国ではあまり例のない展開が起きる可能性もある。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。