台湾の大富豪辜一族のたそがれ?

執筆者:2006年10月号

 資産総額で台湾七位(六月末時点)の金融持株会社、中国信託金融控股が七月下旬、金融当局から行政処分を受けた。同三位の兆豊金融控股への資本参加に際し、不適切な金融取引があったことが問題視された。 取引の舞台となった銀行子会社の辜仲諒董事長が引責辞任を余儀なくされた。同氏は台湾を代表する「華麗なる一族」である辜家の四代目。挫折した御曹司の身の振り方が台湾政財界の話題となっている。 その曾祖父、辜顕栄氏は日清戦争後に日本軍の台北入りを助けて財を成し、「五大家族」と呼ばれた富豪の一角を占めた。事業は、創業者の息子で、晩年に国民党の李登輝政権下で中台対話の窓口団体、海峡交流基金会の理事長を務めた辜振甫氏が継承。他の四家族が没落するなか、現在まで独特の存在感を保ってきた。 辜家は二〇〇三年、拡大した事業を大きく二つに分けた。辜振甫氏の二男、辜成允氏が率いるのが和信グループ。セメント最大手の台湾水泥を中核に化学、電力、建設も含めた企業群を形成する。 辜振甫氏の甥で、一族の「長老格」の辜濂松氏は金融の中国信託グループを率いる。今回辞任した辜仲諒氏はその長男。二男の辜仲氏は金融持株会社で台湾十二位の中華開発金融控股の総経理を務める。

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