7月の選挙で勝利したジョコ・ウィドド(通称、ジョコウィ)が第7代インドネシア共和国大統領に就任する10月20日まで、1カ月を切った。現在、新政権発足に向けた組閣作業が急ピッチで続けられている。

 ジョコウィの勝利は、エリート層出身でない庶民派大統領が誕生したという点で、インドネシア政治史の画期をなすものであった。それに加えて、ジョコウィの勝利を支えたのが既存の政党組織ではなく、一般市民が自発的に参加したボランティア組織だったことは、インドネシアの民主主義が深化しつつあることを示す象徴的な現象であった。

 ジョコウィを支えようという市民ボランティアたちの情熱は、選挙の興奮が過ぎ去った後も冷める気配がない。一方、政権発足が近づくにつれ、政党や議会とどう付き合っていくかという現実政治の要請に、ジョコウィも向き合わざるをえなくなりつつある。

 

SNSによるボランティアの選挙運動

 大接戦となった選挙に勝利できた最大の要因は、ボランティアの存在だった。元国軍将校として人権侵害事件に関与した疑いのあるプラボウォ・スビアントが勝利すればインドネシアの民主主義は後退すると考えた一般の市民が、自らの意思でジョコウィ支持を訴える活動を始めたのだ。

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