ついに上海に切り込んだ胡錦濤。その用意は周到、動きは果敢だった。だが、本当の“敵”はその先にいる。「幹部が不正蓄財したり愛人を囲ったりしているなどと密告する手紙が、毎日、全土から届きます。上海の件が発火してからは、何倍にも膨らみました」 中国共産党中央の若手幹部が苦笑いした。九月二十五日、江沢民前総書記の擁護をバックに党中央・国務院の指令に従わず独立王国と化していた上海市のトップ、陳良宇市党委員会書記(政治局員)の解任が発表された。来年秋に予定される第十七回党大会を前に、胡錦濤総書記(国家主席)は、反腐敗を旗印に、自分に忠誠を尽くさない幹部に鉄槌を下したのだ。規律検査機関が党員に、日時と場所の双つを規定(指定)して出頭を求める「双規」の嵐が吹き荒れている。 発端は「昨年の早春、たしか二月ごろに党中央規律検査委員会(以下、検査委)に届いた、詳細な密告だった」という。「微に入り細をうがって内幕を綴っていた。上海の一定ランク、おそらく局長以上にしか把握できない内容で、陳良宇や実弟の陳良軍と複数の土地開発業者らの癒着、腐敗、公金の流用と横領などを、多数の資料とともに暴いていた」。信憑性を初歩的に確認したのち、呉官正検査委書記は、胡総書記に報告し指示を仰いだ。胡は関係方面の根回しを終え、「昨年末ごろ、検査委のナンバー3、李至倫副書記をトップとする秘密の特別チームを発足させ、真相解明を命じた」という。

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