来し方をたんたんと語る……(筆者撮影、以下同)
来し方をたんたんと語る……(筆者撮影、以下同)

 ウクライナ・クリミア半島の少数民族クリミア・タタール人は、15世紀から18世紀にかけてこの地を支配したクリミア・ハン国の住民の子孫だといわれている。多くは穏健なスンニ派イスラム教徒で、トルコ語系の言語を話す。

 1944年、彼らはスターリンから対独協力の嫌疑をかけられ、中央アジアに強制移住させられた。この時の飢餓や強制労働による死者は、民族の半数近くに達したといわれる。ソ連崩壊の直前から故郷クリミア半島に帰還する運動が盛んになり、半島での現在の人口は27万人前後になった。ソ連とロシアに対する不信感が根強く、ロシアによる今年3月のクリミア半島併合にも激しく反発した。

 このクリミア・タタール人社会で、最も著名な作家の1人がアブラジズ・ヴェリエフ氏(74)だ。強制移住を生き延びた彼は、半世紀近くにわたってジャーナリストとして活動する一方、作詞家としても名を成した。タタール語、ロシア語、ウズベク語による著書は50冊を超える。シンフェロポリ技術教育大学で教壇に立ち、同大学の科学研究センター長も務める。

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