タイのタクシン政権が国軍のクーデターにより崩壊したことで、東南アジアではフィリピンの動向に注目が集まっている。タイでのクーデター成功に刺激され、フィリピン国軍もアロヨ政権の打倒に動く可能性がにわかに現実味を帯び始めたためだ。 アロヨ大統領は今年二月、一部の国軍将校によるクーデター計画を封じ込めた。しかし、「伝家の宝刀」である非常事態宣言を布告したアロヨ氏の強権体質への不満は逆に鬱積。現在のところ一応は好調な経済がつまずけば、一般国民もクーデターに同調する公算は大きい。 もう一つ、クーデターへのハードルが低くなっていると見られる国がインドネシアだ。 ユドヨノ大統領は二〇〇八年の国軍司令官人事で改革派の盟友であるジョコ・サントソ陸軍参謀長を司令官に据え、国軍を完全掌握した上で〇九年の大統領選挙に臨みたい考えだ。しかし、国軍内部の守旧派は、経済政策でもたつきが目立ち始めたユドヨノ政権に対し巻き返しの機会を狙う。 また、ユドヨノ氏が国軍を掌握しながら次回の大統領選で負けた場合は、「自ら国軍を動かしてクーデターを起こし、政権の座に居座る恐れもある」(国際軍事筋)との観測さえ流れ始めており、当分は軍部の動きから目が離せそうにない。

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