40兆円突破も「国民医療費」抑制の切り札とは

執筆者:磯山友幸2014年10月22日
 どこの病院でも待合室は常に満席(C)時事
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 増え続ける医療費の伸びが止まらない。10月8日に厚生労働省が発表した2012年度の国民医療費は、39兆2117億円と前年度に比べて1.6%(6267億円)増え、6年連続で過去最高額を更新した。同省がすでに発表している「概算医療費」は2013年度も2.2%増えており、13年度の国民医療費は40兆円を突破した可能性が高い。増え続ける医療費は、国や地方の財政に重くのしかかっており、膨らむ財政赤字の大きな要因になっている。

 

焼け石に水

 国民医療費とは、患者本人が窓口負担する分と、保険で賄われる部分に大きく分けることができる。しばしば世界に誇るシステムだとして礼賛される「国民皆保険」制度である。窓口負担と保険ですべての医療費が賄われていれば、年々医療費が増えていたとしても問題は起こらない。だが、現実には、窓口負担と保険料では賄えず、国民健康保険の不足分を穴埋めする格好で国や地方が公費負担している。

 2012年度の医療費のうち、患者の窓口負担は4兆6619億円で、国民医療費全体の11.9%。保険料(保険加入者と企業の負担合計)によって賄われている分が19兆1203億円と、全体の48.8%に相当する。残りが公費つまり税金で賄われている部分で、2012年度は15兆1459億円と、全体の38.6%に達している。実際は医療費の4割近くを税金に依存しているわけで、もはや保険制度で成り立っているとは言い難い状態に陥っているのだ。

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