携帯電話「通信高速化」の利と害

執筆者:2006年11月号

いつでもどこでも携帯電話からインターネットに接続できる時代は目前。だが有害コンテンツがはびこる危険も――「iモード型のビジネスモデルを根底から覆す」――九月二十八日に携帯電話端末新機種を発表したソフトバンクモバイルの孫正義社長は、携帯電話向けコンテンツの無料化を宣言した。パソコンではインターネット経由で無料入手できる情報も、携帯では有料である場合が多い。これを無料化することによって、新規加入者の獲得を狙っているわけだ。 しかし、孫社長が宣言せずとも、業界はすでに携帯電話でパソコンと同等の情報を提供する方向に動き始めている。その一つが携帯用の簡易画面ではなく、パソコンと同じ画面を閲覧できる「フルブラウザ化」だ。これは携帯のブロードバンド(高速大容量)化によって実現可能となりつつある。この技術革新は、携帯業界の地図を大きく塗り替えるインパクトを持つほか、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や動画投稿サイトサービスがいっそう社会に広く浸透する道も開き、さまざまな可能性を広げる一方、未成年者の携帯電話利用の仕方に悪影響を与える危険も孕んでいる。「情報量が一挙に増える」。七月に米グーグルと提携し、公式サイトにその検索エンジンを導入したKDDI(au)は、従来の同社が認定したサイトを表示する「公式サイト方式」から「一般サイト」へと検索領域の拡大に舵を切った。これまで携帯向け簡易サイトが優先されてきたのは、通信速度の遅さと画面の小ささなどを補う意味合いに加えて、有料情報の配信がKDDIなど携帯事業者にとって重要な収入源になっていたという台所事情がある。従って、auにとって無料サイトへの入り口となるグーグル導入は、減収覚悟の戦略転換だった。

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