「北風政策」で日本に富裕層はいなくなる

執筆者:磯山友幸2014年11月4日
 財務省から税調への入れ知恵?(野田毅税調会長と麻生太郎財務・金融相)(C)時事
財務省から税調への入れ知恵?(野田毅税調会長と麻生太郎財務・金融相)(C)時事

 10月下旬、日本経済新聞は「政府・与党は富裕層の税逃れ対策を強化する検討に入った」と報じた。具体的には、「1億円を超える金融資産を持つ富裕層が海外に移住する場合は株式などの含み益に所得税を課税する」ことを検討、自民党の税制調査会が年内にまとめる2015年度の税制改正大綱に盛り込み、同年度からの実施を目指すという。

 課税強化と言っているが、実際には、海外移住を阻止するのが狙いであることは明らかだ。この10年ほど、多額の資産を保有する富裕層がシンガポールや香港、スイスなどに移住するケースが相次いでいた。日本政府が資産課税を強化する動きを敏感に感じた大金持ちが、自らの資産を守るために海外に資産を逃がしてきたのだ。いわゆる「キャピタル・フライト(資本逃避)」である。それを何とか食い止めようというのだ。

 海外に移住しようとする資産家は厳しい選択を迫られることになる。含み益に課税するということは、実際には株式を売却していなくても税金が発生するという意味だ。事実上の「出国税」のような機能を果たすことになる。つまり、国を出ていきたいのなら、これまで以上に税金を払ってからいけ、というわけだ。

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