「強み」だったはずの米国との密接な関係が、いまやアラブ大衆からの猛反発の原因に。高齢・健康不安の大統領の選択は――。[カイロ発]米国が頼りにする穏健アラブ諸国の雄エジプトで、二十五年の長期政権を率いてきたホスニ・ムバラク大統領(七八)から、二男で与党幹部のガマル・ムバラク氏(四三)への権力“禅譲”の可能性がまことしやかに語られ始めた。だがムバラク大統領が、反米イスラム主義勢力の域内台頭など数々の難局を「世襲」という非常手段で強行突破できるかどうかは、極めて不透明だ。 世襲説は、九月十九―二十一日の支配政党「国民民主党」(党首・ムバラク大統領)年次党大会で一気に現実味を帯びた。大会初日にガマル氏が約一時間の演説をぶったからだ。「原子力エネルギーを検討すべきだ」「『拡大中東構想』などを通じてアラブの団結を崩そうとする外国勢力の計画を拒否する」――主張は斬新だった。エジプトは約二十年間、原子力開発を棚上げしていた。突然の政策転換の背景に、反米を旗印に核開発を進めるイランへの対抗心もうかがわれた。また「拡大中東構想」は「域内民主化を支援し、テロを防ぐ」という米ブッシュ政権の中東政策の根幹で、その拒絶は親米路線からの決別宣言と受け取れなくもない。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。