十月十二日、パリで開かれた仏独首脳会談。北朝鮮の核実験問題やイラン、レバノン問題など国際情勢が緊迫するなかで、両首脳がもっとも時間を割いたのは、欧州航空大手エアバスと親会社EADSの経営を巡る問題だった。 エアバスは超大型機「A380」の生産と航空各社への引き渡しが、当初計画よりも二年近く遅れる見通し。これに伴う損失の穴埋めと生産効率の向上をめざして、大規模なリストラを計画している。仏独で工場再編による雇用喪失への懸念が高まり、一気に政治問題化した。 特に、A380の生産の遅れが著しい独ハンブルク工場を一部閉鎖、人員も解雇するとの噂が流れ、独側は警戒感を強めていた。会見で独メルケル首相は「独仏両国が対等な立場で進まなければならない」と強調。シラク仏大統領も「(リストラは)ハンブルクとトゥールーズ(仏本社工場)で調和がとれた内容が望ましい」と応じた。しかし、「バランス重視」の姿勢こそがエアバスの改革を妨げている。 リストラ計画の骨子を作ったのは、今年七月にエアバスの社長兼CEO(最高経営責任者)に就任したクリスチャン・ストレイフ氏。危機回避へ向け年間コストの二十億ユーロ削減や、人件費の三割カットなどを二〇〇八年頃までの目標に掲げた。しかし具体策を巡りEADS、仏独政府の了解を得られず、就任からわずか約三カ月で十月九日に辞任した。

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