北朝鮮への送金は止められるのか

執筆者:鷲尾香一2006年12月号

北に流れ込む資金の「蛇口」を締めるため、金融機関の協力が求められている。一方、朝銀の相次ぐ破綻は大元の「栓」を閉めることに……。「外国為替(海外送金)の事務手続きはどうなっていますか」 十月中旬、関東のある金融機関を二人連れの男が訪ねてきた。地味なスーツを隙なく着こなした男たちは外国為替の担当者を呼び出し、質問を重ねて送金業務の実態をひとつひとつ確かめていく。事務手続きを正確に行なえているか。疑わしい取引を的確に見つけ出し厳正に対処できるか。丸一日かけてすべての確認作業を終えると二人は金融機関を後にした。向かった先は東京・霞が関。二人は金融庁の検査官だった。     * 金融機関に対する特別検査が進められている。内容は、大手も中小もほぼ同じ。海外送金の実態を把握するのが目的だ。一部の金融機関では、顧客名簿と口座をつきあわせて預金者の実体を特定する「名寄せ」も行なわれている。検査は北朝鮮に対する金融制裁の効果を上げるため、欠かすことのできない作業だった。 ミサイル発射(七月)に続き、核実験(十月)に及んだ北朝鮮に対して、日本政府はさまざまな制裁措置を発動している。十月十一日からは北朝鮮国籍保有者の入国を原則禁止し、十四日からは生鮮食料品を中心とした北朝鮮産品の輸入と北朝鮮船籍船舶の入港を全面禁止した。

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