[モスクワ発]店頭の電光掲示板に表示される通貨ルーブルの対ドル・対ユーロ交換レートがころころと変わる。ロシア中央銀行がルーブルの急落に抗しきれず、完全な変動相場制への移行を発表した翌日の11月11日。モスクワ市内の大手銀支店では行列や混乱こそ見られなかったものの、いくつかの店舗では「両替で5000ドル以上が必要な場合には事前に相談してほしい」と説明していた。

 

対ドルで4割下落したルーブル

 ウクライナ情勢をめぐる米欧の対ロシア経済制裁が、住民の間にパニックを起こしているといった実態はない。だが、ルーブルが年初から対ドルで約4割も価値を下げたことに状況の深刻さが表れている。

 中銀はルーブル買い支えの介入に10月だけで300億ドル(約3兆4800億円)を投入。外貨準備高は年初の5096億ドル(約59兆2400億円)から10月末の4286億ドル(約49兆8300億円)まで急減した。11月5日には介入の限度額を1日3億5千万ドル(約407億円)に制限すると発表し、10日には相場変動の許容幅を完全撤廃するところまで追い込まれた。

 市場関係者の間では「完全な変動相場制への移行で投機行動は困難になったものの、ルーブルやロシア経済に対する厳しい評価は変わらない」との見方が多い。

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