グーグルとテレビ局の権利交渉の本質

執筆者:梅田望夫2006年12月号

 十月十四日、ナリーグ優勝決定シリーズ第三戦「ニューヨーク・メッツ対セントルイス・カージナルス」をテレビ観戦していたら、観客席にスティーブン・タイラー(ロックバンド「エアロスミス」のヴォーカリスト)の姿があった。一緒にテレビを見ていた妻が言う。「私がいままでに聞いたアメリカ国歌の中で、スティーブン・タイラーが球場で歌った国歌がいちばん素晴らしかったのよ」「へぇ、見てみたいなぁ」 メジャーリーグ好きの私たちは、過去の重要な試合のビデオは撮って残してあるのだが、その中にあるのかないのかもわからないし、該当箇所を探すのも面倒だ。それでふと思った。「ひょっとして、ユーチューブに上がっているかもしれないよ」 妻はすぐにパソコンのある部屋に行き、ユーチューブの検索機能に「Steven Tyler, National Anthem」と打ち込んだ。「あったぁ」という声に続いて、スティーブン・タイラーの国歌が聞こえてきた。二〇〇四年十月二十三日のワールドシリーズ第一戦が始まる直前のセレモニー映像が、妻のパソコンで再生されていたのだ。 ボストン・レッドソックスが三連敗から奇跡の四連勝でニューヨーク・ヤンキースを倒したあの二〇〇四年の興奮、一九一八年以来初めてワールドシリーズを制覇したレッドソックスの狂喜乱舞、ボストンの本拠地フェンウェイパークの熱狂……。

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