海外メーカーと比べ優位の高付加価値商品も、国内ではあっという間に値下げ合戦。早まる「コモディティー化」にどう対処すればいいのか。 国内の電機業界が「かりそめの好況」を謳歌している。十月末に出揃った九月中間決算では、日立製作所やソニーなどをのぞき、大半の大手が増収増益に胸を張った。 中でも、国内で「電機の勝ち組」の称号が定着した感のある松下電器産業は、純利益が前年同期比七九%増の千百五十一億円となり、電機大手でただ一社、一千億円を超えた。加えて、同二一%増の二千七十三億円だった営業利益は一九九〇年上期以来十六年ぶりの高水準だった。 ところが、同社の社員によると、大坪文雄社長は現在の業績にまだまだ不満だそうだ。 たしかに、決算の内容をよくみれば、売上高営業利益率(四・七%)は目標の五%を下回っており、売上高成長率も三%と鈍い。二〇%を超える営業利益率や二ケタの売上高成長率も珍しくない世界の有力エレクトロニクス・IT(情報技術)企業を物差しにすると、「平凡な収益力」で「低成長」の会社に区分されてしまう。 増益にしても、中身をみれば楽観はできない。上期の営業増益幅三百六十三億円のうち、過半の二百六億円は為替差益である。上期は製品価格下落による営業減益要因がグループ全体で二千億円を超えた。これを二千二百億円超のコストダウンでなんとか凌いだところに円安の追い風が吹き、たまたま十六年ぶりの高利益が出せたというのが真相だった。

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