いつか来る破局 上海の少子高齢化

執筆者:徳岡孝夫2006年12月号

 迷信めいた話だが、現に満月の晩には凶悪事件が多いという統計があるそうだ。毛沢東が四十年前に文化大革命を始めた理由は、いまでは合理的に説明されているが、私はなお釈然としない。あの年から十年間ほどは、太陽の黒点が増えたか、または他の天体に人類のいまだ知らない何かが起き、それが人類の血を騒がせ、荒々しくさせたのではないかと疑っている。 香港に流れ着いた、手足を縛られた老人の死体。親が実権派だと密告した少年紅衛兵。一九六八年ベトナムのテト攻勢。米国のキング牧師暗殺と大デモ。パリの学生暴動。プラハの春を圧殺したソ連戦車隊から一九七二年ミュンヘン五輪へのパレスチナ・ゲリラ襲撃あたりまでの四年間は、とくに荒れた。 日本でも全共闘の破壊により、学園は荒廃した。三島事件があった。エンプラ寄港反対、浅間山荘、連合赤軍事件があった。新宿騒乱もあった。北朝鮮がミサイル撃とうが核実験しようがデモひとつない今日と、同じ日本のことと思えない。 しかし敢えて地球上に原因を求めれば、それはやはり中国の文革だろう。手に手に赤い本を持った子供の大集団が、国家主席や老作家を死に追い込んだ。何億もの群衆の発するエネルギーは、どこかの天体からの照射と同じほど、地球全体を熱くするのだろう。

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