A380「減量」に苦しむエアバスの瀬戸際

執筆者:清水常貴2007年1月号

すでに三度も引き渡しを延期。このままではボーイングのひとり勝ちを許し、航空機産業の将来にも赤信号が――。「巨星」と呼ぶ人もいる。ヨーロッパが一体となって開発しているスーパー・ジャンボ「エアバスA380」だ。十一月十九日、成田空港にその雄姿を見せた。総二階建てで、ジャンボ機の一・五倍、五百五十五人の乗客を運べる旅客機である。 このエアバスA380ほど話題を提供した航空機はない。フランス・ツールーズのエアバス本社で製造を決定したのが二〇〇〇年十二月。〇六年には一号機がシンガポール航空に引き渡されるはずだったのに、三度に亘る延期を繰り返し、引き渡しは〇七年十月にずれ込んでいるのである。たび重なる遅延に、世界最大の貨物輸送会社、米フェデックスが貨物機十機の発注をキャンセルし、米ボーイング社のボーイング777型機に切り替えた。同じく貨物機十機を発注している米大手貨物輸送会社のUPS(ユナイテッド・パーセル・サービス)も発注を取り消すかもしれないといわれている。 旅客機では、一番機を受け取ることになっているシンガポール航空は「発注に変更はない」と語っているが、タイ国際航空は「キャンセルがないとはいえない」と口を濁し、最多の四十三機を発注しているアラブ首長国連邦のエミレーツ航空は遅延に業を煮やし、ツールーズの組立工場への監視員派遣を要求している。キャンセルはないまでも、損害賠償金を要求されうる事態である。

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