増大する一方の資源需要を背景に、鉱物資源業界では激しい買収合戦が続く。寡占化の先にあるものは……「まるでオセロゲーム」。大手商社の非鉄金属担当者は二〇〇六年の世界の鉱物資源業界を振り返ってこう語る。食うか、食われるかのめまぐるしいM&A(合併・買収)合戦が展開されたからだ。 六月、米最大の銅鉱山会社、フェルプス・ドッジが、カナダの鉱山大手、インコとファルコンブリッジの二社を同時に総額四百億ドル(約四兆六千億円)で買収すると発表した。インコはニッケルでは世界第二位の生産量を誇るほか銅、コバルトなどにも強く、カナダ国内とインドネシアに大鉱山を保有する。ファルコンブリッジは銅、ニッケル、アルミニウムが中心で北米、南米、豪州などに幅広く開発を展開している。 両社ともに〇五年以降、様々な買収提案を受け、敵対的TOB(株式公開買い付け)にさらされる恐れもあった。そこにフェルプスがホワイトナイトとして登場、三社で合併するスキームを描き、経営陣や株主の支持を受けた。これで北米最大の非鉄金属メジャーが誕生し、一件落着するはずだった。 だが、それでは済まなかった。ファルコンブリッジ買収を虎視眈々と狙っていたスイスのエクストラータが買収提案の金額を大幅に引き上げ、逆転。インコは、世界の鉄鉱石の三分の一以上を生産するブラジルの巨大鉱山会社リオドセに百七十一億ドル(約一兆九千六百億円)で買収された。二件の買収金額の合計は当初のフェルプス・ドッジの二社同時買収の金額を下回るが、買収提案の現実性や株主への高額配当の公約、経営陣への現在のポストの保証、従業員の雇用維持など金額以外のアピールで土壇場の大逆転が起きた。

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