好業績を背景に再び拡大戦略に出た大手銀行。だがその旧態依然の戦略は、むしろ市場を退化させる恐れすらある。 大手銀行の二〇〇六年九月中間決算は連結純利益が過去最高を記録した。昨年度に続く好決算は、銀行の“復活”を象徴する。だが、本当に日本の銀行は「マトモ」になったのだろうか。ゼロ金利と公的資金によって、不良債権という過去の失敗を帳消しにしてもらい、リストラも進めて大いに身軽になったのは事実だが、一方でビジネスモデルは旧態依然。しかも高収益を背景に旧弊の「銀行の論理」が“復活”、資本市場を大きく歪め始めている。 三菱UFJフィナンシャル・グループなど大手銀行六グループが十一月中・下旬に発表した〇六年九月中間期の連結純利益は、合計で一兆七千三百億円に達した。過去の不良債権処理で積んでいた引当金の「戻り益」が大きかったとはいえ、各社とも数千億円規模の利益を上げており、中間配当も軒並み積み増した。 収益好調を背景に、各社とも拡大戦略を強化している。その端的な表れが人材採用だ。日本経済新聞の採用状況調査によると、みずほフィナンシャルグループが内定した来春採用者は二千三百八十八人。〇六年春の二千二百十五人に続いて大量採用を実施する。合併後初めての採用活動を行なった三菱東京UFJ銀行も内定者を二千人とし、一気に前年の三倍に増やした。他の銀行も大量採用を復活、花形業種ともてはやされた往時を彷彿とさせる。

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