大規模な石油・天然ガス開発事業「サハリン2」で、ロシア政府系のガス会社ガスプロムが過半数の株式を取得した乗っ取り劇。最初に環境破壊の言い掛かりをつけ、出資企業である英蘭石油メジャーのロイヤル・ダッチ・シェル、三菱商事、三井物産を恫喝し、一躍脚光を浴びたロシア天然資源監督局のミトボリ副長官の「素性」に関心が集まっている。 ミトボリ氏は、プーチン大統領と対立してロンドンに亡命した政商ベレゾフスキー氏から、政権に批判的だった新聞『新イズベスチヤ』の運営を任されていたが、二〇〇三年に突然、同紙を閉鎖、クレムリンに寝返っていたことが発覚した。 その後、〇四年に現在のポストに就き、次期大統領選出馬を表明したカシヤノフ前首相の別荘建設による環境破壊を追及するなど、自然保護を名目にプーチン大統領の政敵を潰す役割を担ってきた。「サハリン2」問題では、ミトボリ氏の背後に、次期大統領候補でガスプロム会長のメドベージェフ第一副首相やトルトネフ天然資源相の影もちらつく。 一方で、問題が表面化した後の〇六年十月には、ミトボリ氏の事務所が検察の捜索を受けるなど、ポスト・プーチンをめぐりメドベージェフ氏と対立する政権内強硬派との関係は複雑。「サハリン2」が決着したことで、使い捨ての憂き目に遭う可能性も十分にある。

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