日興が「墜落後」も下げつづける社会的信用

執筆者:柴田雄大2007年2月号

 不正な会計処理による利益水増しという不祥事に揺れた日興コーディアルグループ。社長有村純一(五七)と会長金子昌資(六七)は退任し、新社長に就任した桑島正治(五二)は出直しを図ろうとしているが、不祥事発覚以降の同社の動きも首をかしげることばかりだった。「日興は何を考えているのだ」。問題の表面化を受け開かれた会見の内容に、金融庁幹部は激怒したという。有村の代役として派遣された副社長の杉岡広昭(五八)は「一社員の事務的ミス。経営責任は減給処分で終わり」でお茶を濁そうとしたからだ。今回のようなケースでは、金融庁に対して社内処分の内容を報告してから発表するのが鉄則。関係者によると、日興は「きちんとやります」と伝えただけで、細かく説明していなかったフシがある。 お粗末なのは、有村も金子も「あの処分で充分」と本当に思っていたことだ。山本有二金融担当相がトップの経営責任に言及しても、金子は「許認可行政の時代じゃあるまいし、なんで俺が役所に首を取られなければならないんだ」と周囲に漏らしていたという。 それどころか、問題の当事者で最初に辞任を発表した日興プリンシパル・インベストメンツ会長(グループ会社の取締役を兼務)の平野博文(四五)をいずれは復帰させ、有村の後継に据える考えだったという。ロンドンなど海外での投資銀行業務が長く、父は元三菱銀行専務、英語はネイティブ並みという平野は社内で「プリンス」と呼ばれ、有村のお気に入りだった。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。