緑深い鈴鹿山脈のふもとから高品質の液晶テレビを送り出す最新鋭工場の周辺で、強みを揺さぶる「異変」が起きつつある。「何も懸案はないんだよ。どの部門も健闘している」。最近のシャープ・町田勝彦社長の口癖だ。主力の液晶テレビは国内シェアで五割を占め、ダントツ。薄型テレビは「大型はプラズマ、中小型の液晶」とされていたが、昨年七―九月の世界出荷台数では37型以上で初めて液晶が上回り、「プラズマとの戦いはけりがついた」(シャープ幹部)と鼻息は荒い。 携帯電話端末でも、高精細の液晶画面を搭載した商品や、ソフトバンクと共同開発したワンセグ携帯「アクオスケータイ」など話題性のある新製品を投入し、国内シェアトップをひた走る。また、業績への貢献度はそれほど高くはないものの、太陽電池事業でも世界シェアトップを二〇〇五年まで六年連続で堅持。こうした各事業の「健闘」で、今期、町田社長が「大企業の仲間入りの目安」として掲げた売上高三兆円という目標の達成は確実な情勢だ。最終利益も初の一千億円乗せを見込んでいる。 しかし、快進撃の陰で目立たないが、順風満帆に見える社業の根幹を揺るがしかねない問題も芽生えている。シャープが先鞭をつけ、称賛を浴びる「モノ作りの国内回帰」。せっかく評価されながら、危機の萌芽は、その心臓部分にみてとれるのだ。

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