日本の半導体大手エルピーダメモリが昨年十二月、台湾の同業メーカー力晶半導体とパソコン用メモリー「DRAM」の事業で合弁を組むことを決めた。総額四千五百億台湾ドル(約一兆六千億円)を投じ、台湾中部・台中県のサイエンスパーク「中部科学工業園区」で五年以内に四つの工場を建設する。 広島県の主力工場が手狭になったエルピーダは、他に日本、中国、シンガポールを新工場の候補地に挙げていた。力晶とならびDRAM製造の委託先としてきた中国の中芯国際集成電路製造をパートナーに選ぶとの観測も流れたが、「免税措置などの投資優遇策は中国が上だが、台湾はインフラが充実している」(坂本幸雄社長)と判断した。 一方、台湾当局は同月末、力晶や茂徳科技など地元の半導体三社に新たに中国工場建設の許可を出し、中国に移転できる回路加工技術の制限も緩和した。こうした動きはエルピーダと正反対に見えるが、その経緯や技術に注目すれば同じ文脈で理解することができる。 台湾の陳水扁政権は二〇〇二年三月、地元の半導体メーカーの中国工場建設を許可する方針を決め、〇三年一月に第一号として最大手の台湾積体電路製造に許可を出した。ただ、移転技術は材料のシリコンウエハーで直径八インチ、回路の微細加工技術は線幅〇・二五マイクロメートル(一マイクロメートルは百万分の一メートル)に制限。同時に、台湾域内にウエハー一枚当たりの半導体チップの生産量が八インチの二倍以上となる十二インチウエハー対応の工場の建設を義務づけた。中国進出を焦った各社が工場新設に奔走した結果、台湾には現時点で国・地域別で世界一の十カ所もの十二インチ工場が建った。

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