森トラストが、保有していた藤田観光の全株式を米モルガン・スタンレーが運用する投資ファンドに売却した。森トラストは自社が運営するホテルとの相乗効果を狙って藤田観光の株を買い集めたが、「ホテル事業を知らない銀行からの天下りの経営トップと意見が全く合わなかった」(森トラスト幹部)ことから保有株の放出に踏み切った。 森トラストの軍門に降ることを懸念していた藤田観光の経営幹部は森トラストの株放出を歓迎したようだが、「藤田にとってはこれからが修羅場」と指摘する声は多い。モルガンは森トラストから藤田観光株の約一四%を引き受けたうえ「個人株主などから株を買い集め、ワシントンホテルの売却のほか、含み益がある椿山荘などの不動産を売却したり、再開発して利益を得る」(モルガン幹部)考えだ。 東京・新宿をはじめ各都市にチェーン展開するワシントンホテルは、プリンスホテルに次ぐ数を誇る。しかし、最近は外資系ホテルの進出などで稼働率が低下しているところも多い。 藤田観光の筆頭株主であるDOWAホールディングスは持ち株会社に移行し、重点事業を絞って収益強化を目指しているが、ホテル・観光部門は重点事業から漏れた。「事実上の戦力外通告」で、「モルガンに譲渡する可能性もある」(DOWAホールディングス幹部)という。

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