パワーアップする「中国」のアフリカ政策

執筆者:平野克己2015年2月18日

 1月30、31日の両日、エチオピアのアディスアベバで「アフリカ連合(AU)サミット」が開かれ、ジンバブエのムガベ大統領が新議長に就任した。10の21乗(1兆×10億)という史上空前のハイパーインフレを引き起こし、ジンバブエ経済を破綻に追い込んだあのムガベである。また、今回のサミットではAU財政の自立化が目標として掲げられた。

 AUの運営を司るAU委員会の議長は現在、南アフリカのヌコサザナ・ドラミニ=ズマが務めている。ズマ南アフリカ大統領の元妻であり、ズマ大統領が自分の後継者として次期大統領に目しているといわれる人物だ。いまのAU運営には南アフリカ政府の意向が働いており、欧米と対立するムガベを担ぎだしたことにも、おそらく南アフリカの意思が反映されている。

 

AUの中国シフト

 マンデラ時代やそのあとを継いだムベキ大統領時代の南アフリカは、卓越した経済力を有する同国が政治的にも優越することに対して他のアフリカ諸国が反発するのを避けるため、請われてもAUのトップに就こうとはしなかった。その方針が変わったのはズマ政権になってからで、2012年に熾烈な選挙戦を戦ってガボン人の現職を退け、ドラミニ=ズマをAU委員会のトップに据えた。その背景には中国の意向があったといわれている。中国は南アフリカをBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の正式メンバーに推し、新開発銀行(通称BRICS銀行)の設立と同行の南アフリカ支店開設に漕ぎ着けた。ズマ政権の外交政策には常に中国の導きが働いてきた。

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