大山鳴動「柳沢失言」

執筆者:2007年3月号

 これじゃあ、民主党は政権を取れないな、とつくづく思う。馬鹿な大臣の口を滑らせた発言に鬼の首を取ったようにはしゃいで、国会の審議を拒否した。ま、身内の不祥事、つまり角田義一参議院副議長の政治資金問題(釈明もせず辞めてしまった)や、小沢一郎代表の事務所経費問題などから世間の目をそらし、ついでに愛知県知事選や北九州市長選に効果があれば儲けもの、と踏んだのだろう。 愛知では与党の推した候補をかなり追い込んだが、選挙は大差でも一票差でも負けは負け。互いに痛みわけに終わり、自民党は柳沢続投の方針を貫くことにした。断固、という民主党の勇ましい掛け声は、すぐに無様な結果になることが多い。初めからこの発言で大臣の首が取れると思ったことが間違いだった。 柳沢伯夫厚生労働相はどこで何を言ったのか。何でも、松江で開かれた島根県議選に出馬する候補の会合に出席を依頼された柳沢氏は、東京からの政治記者同行がないことでいくらか開放的な気分になっていたらしい。「こんどは政局の話はしないから」と同行希望の政治記者たちには説明したという。ところが、勉強のために、と若い女性記者が一人、松江まで来ていたのだ。 発言をすべてメモし、本社へ送る。会場で耳で聞くのと、メモを東京で見るのとではニュアンスも違う。東京でこれは問題になる発言ではないか、と判断しニュースとして流した。どこでどういう文脈で話したのか、という大事な部分は忘れられて、「女性は子供を産む機械だ」という発言になって独り歩きする。正確にはどう言ったのか。

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