二年半後の稼動時にはすでに時代遅れになっているやもしれぬ新システム。「それより今、何とかしてほしい」の声をよそに、東証はなぜ――。「一秒、二秒、三秒……」。中国・上海市場の株価暴落が地球を一周し東京市場を襲った二月末。先を争って売り注文を出すトレーダーの目に、東京証券取引所の株売買システムの画面はスローモーションのように映っていた。 取引成立は先着優先だが、自分の注文がちゃんと成立したかを確認するまで次のアクションに移れない。買いそびれたとは知らず、手持ち株がないのに売りを出せば、カラ売り規制に引っ掛かる違法行為だ。証券ディーラーはこの間、画面を前に“フリーズ”するしかない。 欧州の主要市場なら、発注から約定(売買成立)通知までにかかる時間は一千分の十秒程度。それにひきかえ東証では、買い注文が証券会社から東証に飛び、売り注文と付け合せて売買成立の通知が来るまで四秒かかることも珍しくない。データ処理が追い付かず、注文電文が渋滞を起こしているのだ。 証券取引所は設備産業だ。円滑に取引を成立させることが最重要で、東証が「自分たちでやる」と主張する市場規制や投資家保護は、金融庁や証券取引等監視委員会でも務まる。そして、最重要の売買システムは人ではなくコンピューターに支えられている。二〇〇二年四月、東証に爆破予告があったときのことだ。役職員や出入り業者まで全員が退避し十五階建ての東証ビルは無人になったにもかかわらず売買は継続され、職員は「余剰人員ばっかりということだね」と自嘲していた。

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