マグロにワイン、日本酒、トラック、印刷機械……。これがすべて銀行融資の担保である。「動産譲渡登記制度」がスタートしたのは二〇〇五年十月だったが、在庫商品や機械設備などの資産を担保にした融資(ABL=アセット・ベイスト・レンディング)がようやく動き出した。 たとえば、冷凍マグロを担保に融資を実行したのは地銀最大手の横浜銀行だ。神奈川県三浦市の丸文水産加工が在庫として保有しているメバチマグロ一万五千本を担保に五億円の融資枠を設定。丸文水産加工はその融資資金をマグロの買い付け代金に充当する。「丸文水産加工はマグロの水揚げが多いことで有名な三崎港の水産会社で、マグロ漁船の水揚げを丸ごと買い取る“一船買い”をしています。そのためマグロの水揚げがあると、一時的に数千万円の買い付け代金が必要になる。たまたま動産担保を登記できるようになったことから、同社が冷凍倉庫に保管しているメバチマグロを担保にして融資することになりました」(横浜銀行経営企画部) もちろん、担保の冷凍マグロは順次、市場に出荷されるが、倉庫会社が一カ月ごとに在庫証明書を発行し、それに基づいて翌月の融資額を決めるし、万一、返済が滞った場合には、担保のマグロは市場が公表している価格で処分可能だという。

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