一九六八年八月、日本初のコンテナ専用船箱根丸が就航した。船主は日本郵船。私が航海士として入社したのはその翌年だ。本書『コンテナ物語』が描く、世界でコンテナ船が激増した時期とちょうど重なる。ページをめくりながら、海運業に携わった自らの会社人生の足跡を辿るような思いがした。 本書は、世界初のコンテナ船が就航した一九五六年四月から現在に至る半世紀で、コンテナがいかに世界経済を一変させたのか、その物流の歴史を見事に繙いている。 かつて海運業者の責任範囲は、荷を港から船に吊り上げて輸送し、荷下ろし先の港に下ろすまでの「フックオン・フックオフ」だった。いまは生産工場でコンテナに積み込み、消費地で仕分けするまでの「ドア・ツー・ドア」に広く管理責任を負う。弊社も、海運業というより総合物流業と称するのが実態に適っている。そもそも、コンテナ船の発明者はトラック運送業者のマルコム・マクリーン。彼こそ、米国を代表した船会社シーランドの創業者だったのだ。 アジア―アメリカ西海岸を結ぶ北米航路など、定期運航と航海日数の短縮でオンデマンド(要望に応じた)輸送を可能にした現在のコンテナ船は、実はかなり利が薄い商売だ。シーランドが一九九九年にデンマークのマースク海運に買収されたように、コンテナ専業の外航海運会社の栄枯盛衰は激しい。弊社のコンテナ船売上比率は、全売上の三割弱程度。ここ二十年間でコンテナ船部門が黒字になったのはほんの数年だけである。

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