バチカンが乗り出したアジア信者拡大作戦

執筆者:シルヴィオ・ピエールサンティ2007年4月号

中国、ベトナム、韓国、インドなどでカトリック信者増加をもくろむ法王だが、思うほど容易ではなさそうで……。[ローマ発]四月十九日に就任二周年を祝うローマ法王ベネディクト十六世が、アジアにおける信者拡大という野心的取り組みを本格化させている。今年一月中旬、ベネディクト十六世は、カトリック教会内のアジア専門家をバチカンに招集。二日間みっちりと「中国問題」について集中討議させた。その数日後には、ベトナム首相として初めてグエン・タン・ズン首相がバチカンを訪問し、法王の歓迎を受けた。カトリック信者が急増する韓国のみならず、法王は北朝鮮情勢にも関心を持っており、三月下旬にはカトリック使節団が初めて平壌を訪れる。「アジアへの伝道は次の一千年における大きな課題である」と述べたのは前法王のヨハネ・パウロ二世だったが、その言葉以上の行動はほとんどなかった。しかし、ベネディクト十六世はドイツ人らしく、この課題にまっすぐ取り組もうとしている。 過去二年は、法王にとって苦渋の日々だったといっても過言ではない。法王の発言がイスラム教を冒涜したと非難を浴び、ポーランドの大司教は冷戦中ロシアスパイに協力を約束したと認め、聖職者の幼児性愛スキャンダルが噴出した。科学者たちはカトリックが科学に課す倫理的制約に反発し、バチカン市国を擁するイタリアをも含む国々で(カトリックの教えに反して)同性愛者の結婚が認められるようになった。進歩派からは教会の「民主化」を要求され、女性の聖職者を認めるべきだとの声や、聖職者の結婚容認を求める声も高まっている。しかも、世界中でカトリック信者は減る一方で、神学校の生徒まで減少するなど逆風の連続だ。

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