患者さんとともに生きる

執筆者:髙本眞一2015年3月14日

 東大時代に寄付講座を立ち上げたお話は、すでにいたしましたが、それとは別に、2004年、文部科学省の科学技術振興調整費によって運営される「東京大学医療政策人材養成講座(以下、HSP:HEALTH CARE AND SOCIAL POLICY LEADERSHIP PROGRAM)」と称する、ユニークな講座も創設しました。

医療行政や医療財政などに関しては、いろいろなところでさまざまな人が意見を出しているのですが、医療政策については、なかなか語られていません。医療が激動の時代を迎え、医療政策への関心が高まっているにもかかわらず、政策提言ができる人材不足は明らかでしたので、HSPを提案するにいたりました。この科学技術振興調整費は、振興分野の人材育成に関して数多く寄せられる公募企画の中から、テーマの重要性、先進性が認められたもののみに対して、5カ年にわたって交付されるものです。行政側も医療政策を策定する際に、人材の不足を大きな課題としてとらえていたのだと思います。

 HSPは、1年の期間で、医療政策を立案・推進する、次世代のリーダー育成を目的としました。その方法論が、意欲的でした。医療政策立案者、医療提供者、患者支援者、医療ジャーナリストという、ともすると対立しがちな4つのステークホルダー(利害関係者)が一堂に会し、医療に関する様々な分野で活躍する専門家を講師に招いて講義を聞き、問題意識とアプローチを共有したうえで、立場を越えて具体的な政策課題に取り組み、最終的に学術論文や政策提言をまとめて終了という流れになります。特に、患者代表を受け入れるという試みは、あまり前例がなく評価されたと思います。
 HSPを運営する主体も東京大学としては先進的でした。東京大学医学部と先端科学技術センターの2つの部局が連携して発足させたプロジェクトだったのです。いわゆる縦割りの組織運営が当たり前になっている同大学では、2つの部局が協同するのはきわめて珍しいケースでした。

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