辞任の花道を飾れないトニー・ブレアの苦衷

執筆者:マイケル・ビンヨン2007年4月号

「名宰相!」の掛け声を浴びながら花道を去っていくはずだった。しかしイラクのつまずきに追い討ちをかけた金銭疑惑が引き際を阻む。[ロンドン発]英首相としてのトニー・ブレア(五三)の時間にいよいよ終わりが見えてきた。首相の座について十年――過去百年の間にマーガレット・サッチャーのみが達成した記録にこの夏、肩を並べるブレアは、すでに辞任の意向を表明している。だが、それがいつになるかはわからない。後を託されるはずのゴードン・ブラウン財務相(五六)でさえ、答えを知りたくてやきもきしている状態なのだ。 辞任の時期についてブレアが明言を避けるため、予想される時期は七月、九月、あるいは年末、と徐々に引き延ばされている。なぜか。 ブレアの関心は、歴史にどう名を残すかという一点に絞られている。言うまでもなく、イラク戦争の泥沼にイギリスを引きずり込んだ張本人として人々の記憶に刻まれたくはない。内政外交問わず、何らかの輝かしい成功を手にする目処が立つまでは、辞任の時期を明らかにしたくないのだ。しかし、願う「成功」の芽など、どこにも見あたらない。 ブレア率いる労働党のみならず、イギリス社会全体が落ち着きを失っている。ブレアの「死に体」ぶりは日に日に深刻となり、首相の権威も失墜の一途をたどっている。世論は敵対的、いやむしろブレアに対して侮蔑的ともいうべき状態になっている。辞任すると公言しているのならさっさと辞めればよい。多くの有権者がそう思っているからだ。

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