葬り去られた日本漁業「再生」計画

執筆者:一ノ口晴人2007年5月号

このままでは日本の漁業は衰亡する――強い危機感から、再生計画が打ち出されるはずだった。しかし、当初の構想はズタズタにされ……。 三月二十日、今年度から十年間にわたる日本漁業のあり方を示した「水産基本計画」が閣議決定された。二〇〇五年三月の「食料・農業・農村基本計画」、昨年九月の「森林・林業基本計画」とあわせて三本の新計画が出揃い、日本の農林水産行政は新しい局面に入る。 これらの計画に共通するのは、意欲のある担い手(生産者)に絞り込んで支援するという「選択と集中」の思想だ。しかし、今回決定された計画の中身をよくみると、衰退の一途をたどる日本漁業は再生どころか縮小均衡のスパイラルに陥る危険性を孕んでいる。以下、四点に絞って新基本計画の要所を分析し、日本漁業の将来をさぐりたい。(1)「買い負け」でも自給率は上がる 新計画では、水産物の六五%の自給率を「十年後(二〇一七年度)に達成する」とした。〇二年度に始まった旧計画は、当時五三%だった自給率を十年後(一二年度)に六五%まで引き上げることを目標に掲げていた。ところが、〇五年度の五七%からさらに伸びる気配はなく、高いハードルの前に五年間の先送りを余儀なくされた格好だ。

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