世界最大級の天然ガス会社であるガスプロムと、国営のパイプライン独占企業トランスネフチに、独自の武装警備組織を持つことを認める法案がロシア下院で検討されている。欧州などへのガス輸出を独占、石油部門にも進出してプーチン政権の資源外交の切り札となった怪物企業は「軍事部門」まで備えることで、いっそう政治的な存在感を増すことになりそうだ。 下院安全保障委員会が推進する法案によると、新たな武装警備組織は、内務省部隊に依存していたパイプラインや石油、ガス施設などの警備を担当。内務省が貸与する武器を使用するが、重火器や航空機なども含む本格的な装備を想定している。 カフカス地域や南ロシアでは、実際にガスパイプラインの爆破事件や未遂が繰り返されており、腐敗した内務省では警備が困難となっていた。 しかし、ガスプロムの強化は、同社会長で次期大統領候補のメドベージェフ第一副首相の勢力拡大にもつながりうる。このため、内務省など治安機関に立脚し、プーチン大統領の任期延長を謀る武闘派のシロビキが妨害する可能性もあり、年末の下院選や来年の大統領選に向け、きな臭い展開も予想される。

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