戦後70年の「総理大臣談話」について

執筆者:林吉永2015年3月23日

 戦後70年に当たる今年、「総理大臣談話」を発信するに際し安倍首相は、有識者懇談会を立ち上げ、次の5項目を示してまとめに期待を表明した。

 

・20世紀の世界と日本の歩みをどう考え、その経験から汲むべき教訓は何か

・戦後日本の平和主義、経済発展、国際貢献をどのように評価するか

・戦後70年、米国、豪州、欧州の国々、また中国、韓国をはじめとするアジアの国々等と、どのような和解の道を歩んできたのか

・21世紀のアジアと世界のビジョンをどう描き、日本はどのような貢献をするべきか

・戦後70周年に当たって我が国が取るべき具体的施策はどのようなものか

 

 ここで気になることは、「20世紀の世界と日本の歩み」に言う「20世紀」という時間の長さである。しかも「先の戦争をどう考えるか」という「アジア太平洋戦争の総括」について単刀直入、しかも焦点を絞って触れられなかったのは何故か。「戦後70年」は、日本の重大な過失である「アジア太平洋戦争」が前提となっていなければならない筈だが、このような100年ものスパンが示された真意は何処にあるのだろうか。

 また、国が「アジア太平洋戦争の総括」をきちんと行ったかどうかについては疑問の多いところである。「総理大臣談話」が国際社会から注目されるのは、総括の意味が包含されるからである。去る1月31日逝去されたワイゼッカー元西ドイツ大統領は、1985年5月8日の連邦議会において、「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となる」という有名な演説を行った。この言葉は、ドイツの第2次世界大戦を総括する優れた切り口であることで知られている。

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