二〇〇八年のオリンピック開催を前に、中国国営テレビCCTVを使った中国の対米情報戦が激化している。中国メディアの事情に詳しい米国務省関係者は「当初、中国政府はビジネスの観点から、CCTVニューヨーク支局にオリンピック関連業務を任せようとした。しかし三月中旬、突然方針転換があり、ワシントン支局を中心軸とすることが決まった」と話す。 その結果、スタッフを百人規模に拡大する予定だったニューヨーク支局の増員は十人程度に縮小され、逆にワシントン支局は二十人の記者を含めて五十人の大所帯になったという。 中国が、突然ワシントン支局の増員を決めたのは、万が一、オリンピックがボイコットされる事態に備えてのことだ。 ワシントンの中国専門家は「中国は一九八〇年のモスクワ五輪がアメリカのボイコットによって失敗したことをよく覚えている。ワシントン支局のCCTV記者は、アメリカが人権などの問題を理由に北京オリンピック開催に否定的な立場をとらないか見張るための情報要員だ。現に支局長はジャーナリストではなく情報収集が仕事だ」と語る。よほど中国は自国の人権状況に自信がないようだ。なお、ソフトパワーの一環としてCCTVを発展させようとしたニューヨーク前支局長は、北京に召還され、罷免されたともいう。

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