アラビア半島の南端にあるイエメン東部のハドラマウト地域で三月末、無人偵察機がイエメン軍によって撃墜される事件が起きた。イエメンの地元紙は無人偵察機について「イラン製」と報じたほか、サレハ大統領率いる国民全体会議はイランが反政府勢力を支援していると非難するなど、イエメンとイランとの間で緊張が高まっている。 レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラも昨年夏のイスラエルとの戦闘の際に、イランから提供された無人偵察機を使っており、イランがイエメンの反政府勢力にも同様に無人偵察機を提供した可能性がある。 米国の中東専門家は、「イエメンの反政府勢力はシーア派が多いがスンニ派とも近い。このため、イランが完全に影響下におくことは難しい。むしろ、イランとしては反政府勢力に軍事支援を行なうことで、イエメンの北の隣国サウジアラビアを牽制する狙いもあるのではないか」と指摘する。 一方、イエメン政府としてはイランと反政府勢力との結びつきを強調することで、サウジなど湾岸アラブ諸国から支援を受けられるとの計算もあるとみられる。イランとサウジの中東での覇権争いはますます激化しそうだ。

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