都知事選、政党のかくれんぼ

執筆者:2007年5月号

 政党は何のために存在するのか。選挙で多数を得、最終的には権力を握るためである。にもかかわらず、統一地方選挙では安倍晋三首相、小沢一郎民主党代表はまったく存在感がなく、政党も前面に出てはマイナスとばかり陰に隠れてしまった。政党が公認したり推薦すると勝てる選挙も勝てなくなる、という思惑が候補者側にある。だから、知事選挙で当選した十三人、政令指定都市市長四人、すべて「無所属」である。 情けないのは共産党をのぞく政党自らそのことを自覚して、政党隠しをしていることである。その結果、何が争点だったのかさっぱりわからないまま終わってしまった。十三の知事選のうち現職九人が全員当選したのも、政党が後ろに下がってしまったため選択肢を提示できなかったことも一因だろう。 東京都知事選では自民党は完全に後ろに隠れ、宣伝カーにはもっぱら石原慎太郎氏の二人の息子が乗った。二人とも自民党の現職衆議院議員である。石原陣営は今回は自民・公明の与党の支援を受ける考えだったが、宮崎県知事選の「そのまんま東」現象を見て、政党の支持を受けない、という作戦に転じた。選挙の陣頭指揮をとる中川秀直幹事長にも、そして安倍首相にとっても、石原慎太郎氏は、自民党の同じ派閥の大先輩である。また石原氏の子息の伸晃自民党幹事長代理は、自民党東京都連の会長なのだ。だれも石原候補の意向に文句を言えない。結果、百十万票の大差で勝利したとあっては、これまで以上に都政に注文をつけにくくなるだろう。

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