新しい金融庁に求められる複眼的金融行政

執筆者:本田真澄2007年5月号

大蔵省のような業界との癒着から離れ、処分行政を展開したのは正しかった。今後は郵政への指導など、より前向きな役割が求められる。「メガバンクが公的資金を返済し、金融が“平時”の状態に移って久しいのに、金融庁はまだそれに対応した行政のあり方を描けていない。佐藤(隆文)がどんな将来像を描くのか。“金融処分庁”のままなら、いつまでたっても二流官庁だ」 かつて銀行行政も担当した財務省OBは金融庁の行方をそう案じる。今夏、三年にわたりトップを務めてきた五味廣文長官(五七)は勇退して顧問となり、佐藤隆文監督局長(五六)が長官に昇格する見通し。金融庁のトップ交代は日本の金融行政にとってひとつの転換点になりそうだ。     * 金融庁は、旧大蔵省の護送船団行政の失敗に端を発した財金分離(財政と金融の分離)構想により一九九八年に発足した。五味氏はその“中興の祖”といっていい。前身の金融監督庁の時代以来、ノンキャリア中心の検査部隊を巧みに活用し、旧大蔵省時代の接待汚職でガタガタになった金融行政を立て直し、不良債権の処理を進めた。 三菱UFJフィナンシャル・グループの誕生(二〇〇五年)で大手行の不良債権問題が終息するや、今度は「利用者保護」を旗印に個別の金融機関をチェック。大手行や生損保、監査法人、消費者金融などのコンプライアンス(法令遵守体制)の欠陥を厳しく指摘し、業務停止処分を科す「一罰百戒」路線を行政の指針とした。〇六年に金融庁が発動した行政処分件数は百六十三件。前年比で五割も増加した。

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