[モスクワ発]ロシア南部のチェチェン共和国で四月五日、ロシアのプーチン大統領が指名したラムザン・カディロフ氏(三〇)が新大統領に就任した。同氏は共和国最大の民兵組織を率い、国際人権団体などから誘拐や殺人など数々の犯罪への関与を批判される人物だが、ロシアは、十二年以上も悩まされ続けてきたチェチェン独立紛争を封じ込めるため、この若き“プチ独裁者”に「力による統治」を委任したのだ。カディロフ氏は就任直後、従兄のバイスルタノフ氏(四〇)を共和国首相に指名。早くも一族支配が見え始めている。「ロシア最年少の共和国大統領」の就任式典は、チェチェンの首都グロズヌイの東三十キロ、カディロフ一族が牛耳る出身地グデルメスで行なわれた。来賓は約二千人。厳戒態勢下の就任式典にプーチン大統領の姿はなかったが、ロシア大統領府のウェブサイトで「チェチェンの復興に力を尽くさなければならない」と祝辞を述べた。反ロシア的な姿勢でも示さない限り、当面プーチン氏にはカディロフ氏に代わる選択肢はない。 カディロフ氏は、ロシア憲法とチェチェン憲法の両方に手を置き、「ロシア連邦のもとで平和的なチェチェン実現のために尽力する」と宣誓。コザック南部連邦管区大統領全権代表から大統領就任書を授与された。招待客の中には、二千万円もするベンツや、なぜか農業用大型コンバインをプレゼントした者もいた。

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