いま「日米FTA論議」が必要なこれだけの理由

執筆者:小田博利2007年5月号

このごろ少し変な米国、注目されなかったが大きい米韓FTA、そして中国の景気過熱――政治の中心軸喪失の向こうにマネーの宴の終焉が見える。 ニクソン・ショックの再来は、杞憂ではなかったようだ。イラクの泥沼に足を掬われ、中東問題で手一杯な米国は、北朝鮮に宥和的な政策をとり出している。対する日米関係には隙間風が目立ち、四月二十六日からの安倍晋三首相の訪米日程も二日間に短縮された。 金日成の生誕祭が行なわれた四月十五日、金正日はさぞや得意満面だったことだろう。昨年七月のミサイル発射に続く十月の核実験と、北は瀬戸際外交を繰り返してきたが、国連による制裁決議をものともせず、今年に入りベルリンの米朝協議を突破口に、米国から金融制裁解除の譲歩を引き出したからだ。 今や六カ国協議は、核を玩具にする北に圧力をかける場ではなく、拉致問題解決という真っ当な主張をする日本が余計物扱いされる会議になり果てたようだ。最近、米国がちょっと変なのである。 四月七日に米紙ニューヨーク・タイムズがネット版で伝えた記事を、どうみたらよいのだろう。北朝鮮が今年一月、エチオピアに極秘で武器を輸出したのを、ブッシュ政権が黙認した。米中央情報局(CIA)は旧ソ連型戦車の部品や装備を載せたとみられるエチオピアの貨物船が北朝鮮から出港したことを察知した。米政権内で対応を協議し、阻止しないことにしたというのだ。

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