天下り規制が議論されるさなかに発表された“強行突破”人事。だが、財務省の反旗は、逆に安倍内閣を勢いづかせるかもしれない。 安倍内閣と財務省が「天下り」を巡って全面戦争に突入した。“役所の中の役所”として天下りの実質的な温存を画策する財務省と、タブーだった高級官僚の“特権”剥奪を本気で狙うおそらく史上初めての内閣の、まさにガチンコ勝負だ。「エッ、正面突破だって? 東証は何を考えてるんだ。今日発表するとは、財務省の宣戦布告じゃないか」 四月二十四日火曜日、首相官邸。これから公務員制度改革関連法案の閣議決定に入ろうという矢先、塩崎恭久官房長官の携帯電話が鳴った。東京証券取引所が、秋に新設する自主規制機関のトップである理事長を、財務省元次官の林正和氏に決めた、という秘書からの一報だった。塩崎氏の形相は見る間に怒りに変わったという。 東証は三月末の定例社長会見で、秋にできる持ち株会社の社長と取引所運営会社の社長に斉藤惇・産業再生機構元社長を決め、発表していた。実はこの時、持ち株会社の下にぶらさがる自主規制機関の理事長も発表する予定だったのだが、直前に中止になっていた。資本市場改革に心血を注ぐ塩崎氏が「待った」をかけたためだ。

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