中央アジアのイスラム国家タジキスタンで、エモマリ・ラフモノフ大統領が最近、かつてのソ連の支配下で名前にスラブ風の語尾をつけるようになった習慣を改める布告を発した。これによって自分の姓も「ラフモン」となった。ロシアからの自立と伝統回帰の路線を示すものだが、代々受け継いできた姓や名前に突然の変更を迫る措置は国民に戸惑いも与えている。 旧ソ連圏では、他の中央アジア諸国やロシアのイスラム系の民族共和国でも、姓の末尾にスラブ風の語尾がついている。これを外すと、例えばウズベキスタン大統領のカリモフはカリムになる。今のところ、改名気運がドミノ現象を起こして周辺国に広がる可能性は低いが、旧ソ連圏への影響力維持はロシアのプーチン外交の優先課題。「ラフモン大統領」誕生は、バルト三国のひとつエストニアのソ連兵士像撤去と並び、クレムリンには不愉快な出来事だ。 プーチン政権は、アフガニスタンで復活の動きを強めるタリバンの影響が、隣国のタジキスタンからウズベキスタン、あるいはキルギスに波及する事態を警戒。伝統回帰の改名問題が今後、イスラム原理主義の浸透を促す土壌になることを恐れている。

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