二年間の“沈黙”を破った三井住友銀行

執筆者:鷲尾香一2007年6月号

「ついに動き出したな」 大手銀行関係者が、出遅れたメガバンクの変化に注目し始めている。 不良債権処理の遅れに加え、三菱UFJフィナンシャル・グループとともに米国金融当局からマネーロンダリング(資金洗浄)に対するチェック態勢の不備で業務改善命令を受け、日本の金融庁からは金利デリバティブ商品の押しつけ販売の咎で事実上の支店出店禁止(一年間)――一昨年六月に就任した三井住友銀行の奥正之頭取は、この二年近く、西川善文前頭取の“負の遺産”に対処しつつ、「ひたすら頭を下げ、じっと動かなかった」(他のメガバンク首脳)。 だが、営業の手足を縛ってきた出店禁止措置は五月十四日に解除された。それに先立つ四月、全国銀行協会の会長に就任した奥頭取はいきなり反撃に転じた。嚆矢は、経営再建中のダイエーの連結子会社「OMCカード」の株式三一・八%買取りに名乗りを上げたことだ。 四月中旬の第一次入札では三井住友と新生銀行が残ったとみられる。順調にいけば、六月にも落札企業が決まる予定。OMCカードの筆頭株主になる落札企業は三井住友が有力視されている。 奥頭取は続けざまに第二の矢を放つ。三菱東京UFJ銀行に加わった旧東海銀行が経営母体となっていた信販大手、セントラルファイナンス(CF)の獲得だ。三井物産と組み三百八十億円を出資することで、四〇%を保有する筆頭株主となる。

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