輝けるデイヴィッド・ハルバースタムを悼む

執筆者:ダスコ・ドーダー2007年6月号

 四月二十三日、デイヴィッド・ハルバースタムが世を去った。サンフランシスコ近郊での交通事故死だった。その前日、ハルバースタムは親しい友人たちと夕食をともにしていた。招待者だったカリフォルニア大学バークレー校大学院ジャーナリズム学部のシェル学部長によれば、会話は夜半にまで及び、話題の中心は、ベトナム戦争と現在のイラク戦争との共通点だったという。出席者全員の意見が一致したのは、アメリカがベトナム戦争にのめり込んでいった経緯を描いたハルバースタムの“年代記”は、いまなお見事に今日的な意義をもつという点だった。 一九七二年に刊行された著書『ベスト・アンド・ブライテスト』のなかでハルバースタムは、ケネディ、ジョンソン両政権の高官として活躍した最高の切れ者たちの横顔を赤裸々に描いた。彼らが自らに抱いていた恐るべき自信と、自分たちはアメリカにとって何がベストかを最も良く知る者だという彼らの確信を。けれども、彼らが若い兵士を送り込んだアジアの地については、まったくの無知であったことを。その傲慢と無知がいかにアメリカを悲惨な泥沼へと引きずり込んだかを暴くことで、ハルバースタムは政府に対する一般大衆の信頼をじわじわと腐食させた。その後、何十年にもわたって腐食の勢いは衰えることがない。

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