中国で最も裕福な広東省。省都・広州ではタクシーがなかなかつかまらない。車自体はあるが、運転手が不足している。タクシードライバーはある程度のお金を稼ぐと、証券会社の窓口へと走る。乗客を乗せるより、株式投機の方が儲かるからだ。 一時は過熱した北京の住宅市場はかなり沈静化した。その理由は、手っ取り早く利益を上げる目的で、人々が株式市場に資金を投入しているからである。 投機熱は大陸中に広がり、いまや中国全土で約九千五百万人が証券取引口座を持つ。四月二十六日には単日で三十二万五千口座が開設された記録がある。この半年間、一カ月あたりの平均新規口座開設数は三百万口を超えている。特に都市部では、すでに大多数の家庭が株取引を行なっているといっても過言ではない。日本の株式口座取得世帯はようやく一割程度だ。 中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は五月六日、株式市場がバブルの様相を呈していることを「危惧」していると述べた。今年秋には中国共産党大会、来年には北京オリンピックがある。もしひとたび株価暴落が起これば、この二大イベントにダメージを与えるだけでなく、新たな「都市難民」さえ生れかねない事態に陥るだろう。

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